トラウマって?

 私は自他共に認めるお調子者であり、おまけにくだらない蘊蓄語りなのだが、遥か
昔、ある事件?を起こして以来くだらない話をした後は「こんな話、他所で言ぅたら
アカンで?」と必ず念押しをすることにしている。

 その事件とは・・・今から30数年前に遡る。

 とある取引先に若い女性の社員が入社し、私は最初からその方が結構気になっていた。
初々しく可愛い彼女は最初のうちは慣れぬ手付きでお茶などを出してくれていたものだ。
 それから数ヶ月が過ぎ、互いに話の一つも出るようになったある初秋の頃、何時もの
ように営業として訪問したその取引先の応接室で待機していた処、彼女がお茶を運んで
来てくれた。
 部屋の中には二人だけで、少しドキドキしたが、彼女はそのようなことには無頓着な
様子で少し間を置き口を開いた。曰く「○○さん、最近『トラウマ』と言う言葉をよく
聞くんですが、どんな意味なんですか?」との内容だった。
 「好意を寄せる人には意地悪したくなる。」とは言い古された話であるが、その時の
私は今から思えばとんでもないアフォなシャレっ気を出してしまったのだ。
「シマウマって知ってますよね?あれ本来は白と黒の縞なんやけど、まれに突然変異で
黄色と黒のシマウマが居て、それを何時からかトラウマと呼ぶようになったんですよ。」
彼女は眼を輝かせ、真顔になって「へぇ、そうなんですね、有難うございます。」と言い、
踵を返して部屋を出ていったのだが、その咄嗟に私は「(あ、いや・・・ってか本気に
したんとちゃうやろね?)」との言葉が出なかった。

 それから数日経ったある日、「○○さん、酷いですぅ~!」との電話・・・聞けば彼女、
数人の友達を前にして「ねぇねぇ、知ってる?突然変異のシマウマで黄色と黒のトラウマ
と言うのが居るんだって。」とヤッたらしい。
 えぇぇ~~っっ!?あの純粋無垢な彼女にはおっさん(当時からおっさんだったのだ、
悪いかw)のアフォなシャレっ気など通用するはずもなかった。オマケにエラい恥をかか
せてしまったと大いに反省したものだ。(ホンマカイナ)
 あれから30数年が経過し、結婚され2児の母として立派に子育てを終えられた彼女は
現在もその企業に勤務され、私が訪れると何時も笑顔でお茶を出してくれる。
「あれが私の最初のトラウマです。」との言葉に「冷汗三斗」を実感したものだ。
 それからと言うもの、くだらない話をした後には必ず「こんなアホなハナシ、他所で言ぅ
たらあかんで?」との言葉を付け加えるようにしている。特に若い女性相手には・・・
 桑原々々。

(5.9.27記)

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