藪医者?

 今年も師走を迎えてしまった。巷間ではインフルエンザが流行していると聞く。
しかし私にとってはインフルエンザ?コロナ?風邪?・・・はて、何処の世界の
話でしょうか?と言った感じなのだ。
 昔から「アホは風邪ひかない。」と言い古されてはいるが、まさしくその通り
であると我ながら妙に感心してしまう。
 現代でこそ「風邪は万病の元」と言うが、昔というかつい最近である昭和初期
頃までは病気のうちにも入らないほど軽く見られていた風邪。
 俗に「ヤブ医者」と言う言葉はどなたでも耳にされたことがあろうかと思う。
これは「野巫(やぶ、怪しげな祈祷師のこと)」から派生していると言うことは
巷ではあまり知られていない。しかしコレに関してつらつらノーガキを書いても
面白くもなんともないので割愛するが、一方「藪」のほうは室町時代の15世紀
前半に記された書物に「藪医者」の文字が見えると聞く。

 風が吹くとガサガサと忙しくなる竹藪。これに引っ掛け巷に風邪が流行すると
忙しくなる(病気でさえない)風邪くらいしか診ることが出来ない医者、下手な
医者となるのだ。
 「土手医者」と言うのもある。土手は風が吹いてもびくともしない。すなわち
風邪が流行っても忙しくもならない、おまけに薮の下は大体が土手。藪医者より
もっと下手な医者、となる。
 またタケノコ医者、若い医者のことをこう呼ぶが「これから藪になろかいな。」
であり、更には「雀医者」これは大概薮の上を飛んでいる雀を充てて「藪の上」、
藪よりはマシな医者で褒め言葉でもある。
 古来から日本人は相手を慮るあまり直接の表現を避ける斯様な言葉遊びが大好き
だった。ハッキリと「下手な医者」とは言えない奥ゆかしさが産んだ一種の文化で
あると言えなくもないようだ。

 ある街に更科の白い蕎麦が大好きなお医者さんがあった。「やはり蕎麦は更科が
一番だなぁ。」これを聞いた近所の人「あれまぁ、藪が更科を褒めるとは・・・」
 因みに江戸の三大蕎麦とは「砂場」「藪」「更科」と聞く。

(5.12.6記)

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