デゴイチかデコイチか?

 近代日本の発展を根底から支えた鉄道。明治5年に新橋-横浜間が開業してから
150余年が経過したが、その黎明期から列車の先頭に立ち、輸送を根本から支え
近代化に一役買っていたのは紛れもなく蒸気機関車だった。
 急勾配を喘ぎながら攀じ登る姿、そのエグゾースト音を聞く人は確かに「ナンダ
サカ コンナサカ」と聞こえる。人間の発明した機械の中で最も人間らしい機械と
言えるだろう。
 蒸気機関車に全く興味のない方でも「デゴイチ」、「デコイチ」の呼称くらいは
聞かれたことがあると思う。これは昭和11年から20年にかけ製造されたD51
型蒸気機関車の愛称である。
 元々は鉄道省浜松工場で昭和12年、以後これが標準型となる改良試作機である
86号機が完成し、初出庫の際に工員の一人が「やぁ、これはナメクジ(1-85、
91-100号機の渾名)と違うなぁ。まるで額(デコ)に一文字だ。」と言った
のが始まりである、と聞く。

D51形機関車の1-85,91-100号の姿      量産型の86-90,101-1161号機の姿

 きかんしゃトーマスというアニメがあったが、機関車の煙室扉を人の顔に例えると、
まさしくデコの場所に横一文字の給水温メ器が鎮座している。故に漢字では「額一」
と書くのだ。これがD51(デーゴーイチ)の語呂合わせに見事にハマった。実際に
標準形式のD51の運用開始以降には「デゴイチ」の呼称も各区では一般的になって
いた。
 故に「デコイチ」、「デゴイチ」のいずれもが間違いではないと言える。ただ当然
昭和40年代のSL(この呼び方大キライだっちゅーのに)ブームの最中に鉄チャン
達の間から発生した「デゴイチ」からの派生であろう「シゴナナ」、「シロクニ」等
は論外であるが・・・

 蛇足だが昭和13年初製造され、中型万能機関車と言われたC58の給水温メ器も
量産型D51と同様、額に一文字だった。もしもD51が最終生産までナメクジ形で
あったなら、C58がひょっとして「デコイチ(デゴイチじゃないよ)」と呼ばれて
いた可能性が・・・
やっぱりナイかwww

(5.10.25記)

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